「年収1000万円の仕事は何か?」で、高収入な業界や企業について述べた。いったん意気消沈してしまった人もいるかもしれないが、続いてもっと高収入な年収2000万円の職業について考えてみよう。
年収2000万円はサラリーマンには無理
いきなりもっと落胆させてしまっただろうか?
実は年収2000万円はサラリーマンではまず無理だ。
「年収1000万円の仕事は何か?」で列挙した高年俸企業でも、年収2000万円というのは、外資系金融を除いて相当難しい。たしかにM&Aキャピタルパートナーズ、キーエンス、GCAの上位3社は平均年収で2000万円を超えている。しかし再度言うが、これはあくまでも「平均値」である。
これら企業のマネージャークラスとなれば、稼ぐ人は年収5000万円でも億以上でも存在している。だがこれは精鋭中の精鋭とも言うべき人たちで、あまりに数が少ない。こういった人たちの超高額年俸が平均値を底上げするので、年収の「中央値」(一番多い人たちの年収)はもっと低くなる。
実際、以前も引用した国税庁の民間給与実態調査を見れば分かるように、年収2000万円を超える人は、実に全給与所得者の0.6%しかいない。仮に先述の高年俸企業でも、多くの従業員たちの年収は千数百万円というのが実情だ。もちろんこれでも十分多いが。
年収2000万円が可能になる職業
では、さらにそれを上回り、無謀とも思える年収2000万円を可能にする仕事は一体何だろうか?実はこれはある程度限定されてくる。以下に列挙してみよう(外資系金融のサラリーマンは除く)。
- 開業医(高給で一流の士業)
- フルコミ系営業マン(保険や証券など)
- プロスポーツ選手やユーチューバー
- 個人投資家
- 何らかの事業経営者
おおよそこれくらいしかない。一つずつ検証していこう。
開業医など、一流の士業
まず開業医だが、これはもう普通の人には無理だ。本人には医学部に合格・卒業できる能力と、家庭には高額な学費を負担できる財力が必要である。医師や資産家の家系でもない限り、相当難しい方法だ。おまけに勤務医時代は全く稼げない。とにかく開業し、多くの患者がやってくる病院を作るしかない。
ちなみに「一流の士業」というと、他に弁護士や公認会計士も思いつくが、これらも今は厳しいだろう。もちろん、例えば有名な弁護士として名を馳せれば、年収2000万円は可能だ。しかし司法制度改革があり、今は司法試験の難易度も変わった。合格しやすくなった分、法曹の数も増えたが、就職すらままならない弁護士も増えている。会計士も同様の状況である。
当然弁護士や会計士になるためには学習能力も求められるし、資格取得までの期間も数年と長い。これで高年収はおろか、職が見つからないという状態では致命傷になる。資格取得の予備校を悪く言う気はないが、弁護士や会計士の資格を取ったからといって高年収が約束される時代ではない。あまり踊らされないようにしよう。
保険や証券などのフルコミ系営業マン
フルコミッション(フルコミ)系の営業マンも、収入が青天井になる職種である。顧客の契約数に応じてコミッション(手数料)が入るので、多くの顧客を獲得できるトップ営業マンなら年収3000万円~4000万円、それ以上も可能になる。代表格はやはりプルデンシャルやジブラルタといった外資系の保険会社だろうか。
ただし、フルコミッションである以上、顧客を獲得できなければ、最悪収入はゼロだ(最低賃金を保証する場合もあるが)。おまけにこの業界には、野村證券や外資系金融上がりといった猛者の営業マンがゴロゴロいる。よほど営業力がない限り、稼ぐことは難しい。これもまた多くの人には再現性のない稼ぎ方なのである。
プロスポーツ選手やユーチューバー
プロスポーツ選手も高給取りだが、これはもう完全に才能の世界だ。しかも年収2000万円となると、日本ではプロ野球選手しかないだろう。その他のスポーツは、そこまでの年俸を選手に払えない。しかもプロとして稼げる期間は、他の職種より相当短い。海外で活躍するならより多くの年収が見込めるが、それはもはや夢物語の世界。あまりに確率が低すぎる。あなたが多少運動神経に自信があっても、早々に見切りをつけるべきだ。
ユーチューバーもまた、時世を読める感性が必要で、トレンドに乗って膨大な再生数が見込める動画を作り続けなくてはならず、やはりある種の才能が求められる職業だ。人気ユーチューバーなら年収は億を超えおり、子供がなりたい人気職業にも挙がった。
しかし、注意しなくてはならないのは、今は芸能人も多数YouTubeに参入してきており、いわゆるレッドオーシャンになっていることだ。以前から人気のある芸能人であれば、登録者数が百万人単位という人もいるが、ほとんどの芸人などは再生回数も登録者数も鳴かず飛ばずだ。これでは食べていくのは難しい。正直、さらに知名度のない一般人では、このユーチューバー激戦区は勝ち抜けないだろう。
ちなみに、芸能界も目指すのは止めた方がいい。売れるかどうかがあまりに未知数なうえ、よほどのラッキーがない限り、売れるまでの時間もかかる。さらにこのコロナ禍でイベントやファンとの触れ合いもできず、そもそも収益が出せないビジネスモデルになってきている。
芸能人がユーチューバー化するのは、もはや芸能界では食べていけないからだ。TV出演は一部の売れっ子芸能人のみで、イベントやコンサートといった収入元も絶たれている。おまけに芸能人は汎用的なビジネススキルがなく、芸能界でやっていけないとなった時に転職も難しい。これはパンデミックのような社会変化には一番脆い職業なのだ。
個人投資家
個人投資家もまた、「億り人」の言葉よろしく、億単位の収入を稼げる仕事の一つではある。画面に張り付いて、パソコンの操作だけで売買を繰り返し、大金を得ていく。一見簡単そうに思う人もいるかもしれないが、とんでもない。
そこに求められるのは、的確な相場の分析力、大胆な判断力、おまけに運も必要だ。これもまた特殊な才能と言える。そう簡単に多くの人が再現できるパターンではない。しかも大金を動かすというのは相当精神をすり減らす作業だ。もし信用取引などのレバレッジを効かせていれば、取引に失敗した時は巨額の負債を被ることだってある。
有名な個人投資家は書籍や動画でいくらでも見ることができるが、そう簡単に彼らのようになれるわけではない。投資は、あなたが金持ちになるにつれ、必ず求められるスキルとなるが、間違っても簡単に大金持ちになれるなどとは思わないことだ。
何らかの事業経営者
さて、最後に残ったのが経営者である。実は私がおすすめするのはこれである。
そう、「独立・起業して経営者になる」。これが最も再現性が高く、誰にでも実現しやすい年収2000万円を目指せる方法だ。
しかも事業を経営した場合、軌道に乗りさえすれば年収は2000万円どころではない。もちろん多くの努力が必要だが、年収5000万円でも年収1億でも目指すことができる。案外多くの人は知らないが、中小企業の社長は結構な大金持ちが多いのだ。
「起業して経営者になるだって?それが一番難しいだろう!」。そう驚く方もいらっしゃるかもしれない。しかし、そうではない。
よく読み返してほしい。これまで述べた年収2000万円の職業は、どれも才能や運に左右され、圧倒的実力も求められる職業だ。これでは多くの人に再現性がないのである。もちろん独立して経営者になるのに、才能や運が必要ないとは言わない。しかし述べてきた職業よりは必要ない。これは断言できる。
多くの人は「起業」というと、カッコいいベンチャー企業で、上場を狙うといったサクセスストーリーを想起するのかもしれない。メディアがこぞってそういう連中を扱うからだ。
だが私は「誰でも年収2000万円になれるのか?」で書いたとおり、そういう方法論は採らない。それこそ市場を席巻するような大規模事業展開も、上場も狙わない。そんなことは必要ない。そうしなくとも年収2000万円(以上)は狙えるのだ。